ロッキー松村の <小笠原探鳥旅行記 ⑤ =完結編=>
父島最後の朝も、日の出前からヒヨドリ、ウグイス、メジロ、トラツグミなどのにぎやかなさえずりの中を鳥散歩しました。
小笠原にいるハシナガウグイスは、経読み鳥とも呼ばれるいわゆるウグイスの鳴き声とはちょっと違って、千葉の花見川辺りで聴かれる超短縮型の鳴き方に少し似ていて、聴きなしは「ホ~ジョンジョン」かなぁ? とっても面白いのです。いつも思うのですが、ウグイスって方言がありますよね。
今日もまた、アカガシラカラスバトの鳴き声をたどって行くと、公園のガジュマルの木にその姿を見つけました。同じ枝に3羽が止まったり、電線に並んだり、地面に降りて食事をしたりと最大で7羽を観察することが出来ました。前日までは見せてくれなかった姿を最後に見せてくれて、まるでお別れに来てくれたようでした。
▲ガジュマルに群れる赤ポッポ
▲電線にとまる赤ポッポ
▲みんなでお食事
アカガシラカラスバトは環境省の絶滅危惧ⅠA類に指定されていて、小笠原諸島に分布、生息する日本固有亜種の鳥です。生息数は数十羽程度と考えられています。そんな貴重な鳩をこんな身近にまるでドバトのように観察でき、父島はやっぱり世界自然遺産の島なのだと実感出来ました。
夜に降った雨で公園内はあちこちグチャグチャで、鳩観察で歩き回ったので靴底にべったりと土がついてしまいました。段差でこすったり、枝で取ったりしましたが溝にめり込んだ土はあまり取れませんでした。後で大変な目に合うとはこの時は思いもせずに大興奮しながら宿に帰り、美味しい焼き立てパンをいただきました。
朝のミーテングで最終日は南島に上陸することが決まり、注意事項などが伝えられました。
早朝は曇っていましたが、朝食後にはすっかり晴れて、ベタ凪の二見港に宿の車で送っていただきました。
船に乗る前に先ず靴底をきれいに洗っていただきますと説明を受けました。南島は世界自然遺産登録地域なので、一切の植物や動物などの持ち込み、持ち出しが厳しく制限されています。そのため上陸する前に靴底の洗浄は必須でした。靴底についた泥にどんな種や卵が混じっているとも限りません。
バケツに汲んだ海水で靴底をブラシでこするのですが、これがものすごく大変でゴシゴシこすっても全く歯が立ちません。なかなか落とせずに苦労していると、見かねたFISH EYEの男性スタッフが手伝ってきれいにしてくれたのでした。無邪気にアカガシラカラスバトを追いかけ楽しんだつけが一気に回って来たと感じた次第です。ちょっと反省(笑)
靴底を洗い終わって、Beast masterⅢ号の隣に着けられた小型船に乗り込みました。昨日までの荒れた海とは大違い、ボニンブルーのないだ海原を南島に向けて出港しました。
▲靴底洗いで大汗かいて
▲桟橋から小型船に乗り込んで
▲ボニンブルーの海を南島に向けて出港
南島への上陸は鮫池の入り江からなのですが、入り江の入口が岩礁と岩礁の狭いすき間なので、打ち寄せる波のタイミングを見計らって岩の間を一気に抜けて入り江の中に入ります。船長さんの腕の見せ所ですね。無事に入った時には全員で拍手喝采でした。岩のすき間はBeast masterⅢ号では通り抜けられないので、小型船で渡してもらったわけです。
南島上陸には必ず許可証を持つガイドさんの同行が必要で、人数制限や滞在時間などのルールが定められていました。ツアーメンバーは、靴底を洗ってくれたFISH EYEスタッフで許可証を持つ頼れるお兄さんと一緒に上陸しました。入り江の奥の狭い岩場の上に舳先から降りて、次の人が上がれるようにどんどん岩場を登りました。見下ろした入り江に泳ぐアオブダイが上から丸見えで海の綺麗さにまず驚き、世界自然遺産南島探訪が始まりました。
▲南島の入り口は岩のすき間
▲南島へ上陸
▲鮫池の奥には大きなアオブダイ
南島は、珊瑚礁が隆起して出来た沈水カルスト地形で国の天然記念物に指定されています。ラピエと呼ばれる島の岩は珊瑚の化石で出来ていて風化によって岩の先は鋸のようにギザギザで触ればケガをしそうでした。島の成り立ちや島固有の植物などの説明を受けながら石と砂で整備された道を先導するお兄さんの踏み跡を外れないように一列に並んでゆっくりとついて歩きました。
▲岩は珊瑚の化石
▲ハマボッスの咲く斜面
▲巣穴がいっぱいの台地
オナガナギの巣穴等々を見ながら、ラピエの間のきつい山道を、南島一番のビューポイントまで登りました。天辺から父島側を見れば、ハートロックが靄の中にはっきりと見え、振り返れば眼下に扇池の絶景が広がっていました。素晴らしい景色に感動しかありません
みんなで記念写真などを撮っていると、足元の岩を動くものがいました。よく見ればトカゲでした。固有種のオガサワラトカゲにも会うことが出来ました。
往きはよいよい帰りは恐いじゃないけれど、登って来たきつい岩場の急坂の道を今度は手も使いながら慎重にゆっくりと下りました。島の中のウオーキングは、メジロとイソヒヨドリの鳴き声に包まれて気持ちの良い時間でした。鳴き声の先に、枝先でさえずるメジロを見つけました。
ほどなく先ほど見下ろしていた白砂の扇浜に到着、そこから見る扇池はまるでプールのような透明度で波が穏やかなのが池と呼ばれる由縁でしょうか? 池の奥の岩の洞窟からは外洋も見えてとても綺麗でした。静かな入り江の砂浜は記念撮影スポットに早変わり、皆で記念写真を撮りあいしました。
扇池の周りの岩場をよく見ると、カニとトビハゼの仲間のタマカエルウオがいました。
珊瑚由来の白砂が広がる浜を、イソヒヨドリを見ながら少し奥へと移動すると、北側の山裾に先ほどの扇池とは全く違った雰囲気の陰陽池がありました。島には湧水などないということでしたが、雨水と周りの岩から染み出す水と地底でつながった海水が混じりあい汽水の池になっているということでした。池の中には藻が茂り、水面に浮いて緑色に見えて、小笠原の青い海の色を見慣れた目には新鮮な色でした。
藻の上をよく見るとアオモンイトトンボがいました。
陰陽池から次のポイントへ移動していると、頭の上を何かが通過。 シギチ?と思って写真を撮ると、ムナグロとメダイチドリでした。
扇浜の山側を移動して、砂の上に貝殻がたくさん落ちている所へ着きました。説明によると、ヒロベソカタマイマイという半化石の貝殻で、1,000年以上前に絶滅したということでした。拾って持ち帰りたいところですが、天然記念物のため持ち出し厳禁でした。持ち込まない、持ち出さない守るべき大切な南島ルールでした。
楽しい時間はあっという間に過ぎて上陸していられるのもあとわずかとなり上陸点へ移動して、岩場から小型船に乗り込んで南島を後にしました。南島にいられた時間は短かったですが、特別な空間にギュっと凝縮された特別な2時間になりました。
小型船で鮫池を出ると、少し離れた海上に我らがBeast masterⅢ号が待っていました。横づけして船を乗り換えると、お昼までの残された時間を利用して、時間いっぱい父島最後の思い出作りにクジラと海鳥を探してないだ海原を走りました。
▲洋上でBeast masterⅢ号に乗り換えて
海は穏やかで波も弱くザトウクジラもまったりとしているようで、派手なアクションはありませんでしたが、息継ぎに上がってきたときに見せる背びれとオナガミズナギドリを一つの画面に納めることが出来ました。息継ぎに上がって来た時に出来る環状の広がりをクジラの足跡と呼ぶのですが、静かな海面にきれいにつながって広がり、とても感動的でした。
クジラの足跡にゆっくりついていくとブローから背中を見せて、海面にゆっくりと尾びれを持ち上げて、翻して裏側を見せながら海面を蹴り、潜水していきました。
▲ザトウクジラとオナガナギ
▲クジラの足跡
▲プルークアップダイブ
楽しい時はあっという間に過ぎてしまい、お昼近くに港に戻り3日間楽しい時を過ごしたクルーザーBeast masterⅢ号ともお別れです。お世話になった笠井キャプテンとペンションFISH EYEのスタッフの皆さまにはただ感謝しかありません。最後まで楽しい時をありがとうございました。
宿に戻りお昼ご飯にパンを食べて、荷物のパッキングや清算をすませて二見港まで送っていただきました。
船客待合所にはザトウクジラのモニュメントが立っていました。たくさんの楽しかった思い出といっぱいのお土産を持っておがさわら丸に乗船し、長いようで短かった父島での3日間が終わりました。桟橋で「いってらっしゃーい!」と大きな声で見送られ二見港を出港しました。
普通、出港の別れというと銅鑼の音と蛍の光が定番ですが、父島の出港は一味違います。おがさわら丸の二見港の出港見送りに、父島の船が総出で見送りについて送ってくれました。その中に、お世話になったBeast MasterⅢ号の姿を見つけました。すぐ近くに寄ってきてみんなで手を振りながら「行ってらっしゃい」のお見送りの声が聴こえスタッフが海に飛び込み、見送って下さいました。
こちらも「行ってきまぁーす!」「またねー」と大きな声で答え、父島再訪を胸に誓いました。ザトウクジラのヒートランも見ることが出来、最後の最後まで小笠原は最高でした!ビールを開けて父島に乾杯!
そして、帰り航路の海鳥探鳥が始まりました。
終 ロッキー松村
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