ロッキー松村の <小笠原探鳥旅行記 ④>
今回のツアーに参加した最大の目的は、聟島列島をチャーター船で訪ねる日が設定されていたことです。オキノタユウ類の繁殖地を間近に見ることが出来るチャンスはそうそうないですからね。それでも海況次第という一種ギャンブルのようなものでした。
おがさわら丸の航海も大荒れの海でした。父島に渡ってからも、海が荒れる日が続き2日目、3日目と予定が変わり、実は、4日目に予定されていた聟島列島探訪も危ぶまれていたのでした。前日の父島列島周辺海域探訪で、一番北にある孫島まで行き父島列島北側海域の荒れ具合を笠井キャプテンの目で実際に確認していました。前夜の天気予報ではよい方向へと変化しているということで、ほのかな期待を胸に眠りにつきました。
昨夜の雨も上がりしっとりとした4日目の朝も早起きして、ペンション周辺をお散歩しました。
昨日は気が付かなかったのですが、父島のマンホールキャップはイルカでした。
▲イルカのマンホールキャップ
ペンションからゆっくり歩いて30分ほどの所に宮の浜があります。そこかしこにタコノキの群生があり、名前の由来となったタコの足のような根っこがよく見られました。
▲タコノキの群生、名前の由来
雨上がりの木にはオガサワラヒヨドリが止まってくれました。宮の浜は白砂のビーチが扇形の湾に広がっているので波も無く静かでよい所でした。
▲オガサワラヒヨドリ
宿に戻れば今日は和食の朝ご飯でした。
朝食時のミーテングで、天気が回復傾向にあり風が弱まるという予報が出て、海況によっては途中で引き返すという条件つきで聟島列島を目指すことになりました。
船は大荒れが予想されるので、安全な海域に出るまでは、不用意に動き回らない、トイレは危険なので我慢、などなど厳しい条件が提示されました。自分はどう荒れようが船に酔うことはほとんどないので、やったぁー!と大きな声を出すのを我慢して聟島に行ける喜びでいっぱいでした。
準備万端Best masterⅢ号に乗り込んだのだけど大事な忘れ物があることにこの時は気が付いていませんでした。
いざ!聟島列島を目指して出港しました。追い風を受けて波をかき分け快調に船はすべり、父島列島を過ぎて島影を抜けると海が荒れ出しました。大きくうねる海の上を笠井キャプテンは引き返すことなく一路、聟島列島へ針路をとりました。
やがて聟島列島南端の嫁島が見え、しばらくすると列島中ほどの媒島、そして切り立った断崖の針の岩、やがて北端の聟島が見えて来ました。
そして目指す聟島の鳥島に到着しました。途中雨が強く降ったり、大波に揺られたりもしましたが、聟島周辺は穏やかに晴れていました。お連れいただいた笠井キャプテンには感謝しかありません。本当にありがとうございました。
2006年から始められた鳥島からのオキノタユウヒナ移住作戦、聟島を巣立ったイチロウとユキちゃんのカップルにヒナが産まれたことなど何度もテレビで話題になりました。
今その現場を目の前に見て、スピーカーからは大音量のオキノタユウの声が流れ、そしてコアジサシのデコイで大変お世話になっている内山春雄先生のデコイが見えました。デコイに並んでクロアシオキノタユウが見え、しばらくすると聟島を巣立ったであろうオキノタユウの若鳥が顔を出してくれました!!
憧れのオキノタユウに逢えた喜びと、ヒナ移住作戦を行った出口さんの苦労話や裏話、内山春雄先生のオキノタユウのデコイのお話、長谷川博先生の鳥島でのお話などなどが頭の中に思い出され、感極まり涙があふれました。
穏やかな聟島の湾内に入りクロアシオキノタユウ、コオキノタユウが飛び、クロアシオキノタユウの繁殖地を見ながらおにぎりをほおばり、この日のランチは最高でした。唯一残念に思えたのは、ビールを忘れたことでした。青空の下、波に揺られながらオキノタユウ類を見ながら飲むビールはどんな味がしたろうかと今でも思います。
また、私のトレードマークとも思われるバッチの帽子を被って来るのをすっかり忘れていました。帽子にも見せてあげたかった。(笑)
お昼を食べてのんびりとオキノタユウ類を見たところで、再び聟島の鳥島オキノタユウ繁殖地を見て聟島に別れを告げて父島に向けて出発しました。
復路は向かい風で波も高く大荒れ、途中土砂降りになる中、一路父島を目指しました。時折クルーザーの作る波にクロアシオキノタユウがすぐ後ろをソアリングしてくれました。羽ばたきもせず波に乗るその姿は本当にかっこよく神々しく感じられました。
大荒れの帰路の航海でしたが、夕方近くに父島に戻ると天気も回復して、ハシナガイルカのお出迎えでクルーザーの舳先で波に乗りジャンプして大歓迎してくれました。
▲フェアウエルバーベキューパーティー
▲サプライズバースデーパーティー
ペンションに戻ればこの日の夕食は父島最後の夜にふさわしくフェアウエルバーベキューパーティーでした。皆さんと牛ステーキにタンとカルビそれに島メカジキのテールとカマをつまみに最高のビールを美味しくいただきました。
そして参加者のお一人が偶然お誕生日だったので、バースデーケーキのサプライズ付きで父島最後の夜は更け、北太平洋に生息するオキノタユウ類3種も見ることができ今回の旅で忘れることのできない特別な一日になりました。
絶海の孤島で繁殖し、地球の7割を占める大海原を悠然と旅するオキノタユウ類、日本鳥学会鳥類目録での正式名称はアホウドリです。
昔アホウドリが100万羽を超える数で、鳥島で繁殖していた頃、外貨獲得のためにアホウドリの羽毛を輸出していました。人に会ったこともなく恐れてもいなかった事と、身体の大きさゆえに簡単に飛び上がることができずに、簡単に撲殺され命を奪われ絶滅したと考えられていました。
当時は簡単に捕まえられたことからバカ鳥と呼ばれていました。鳥の和名を正式に決める時にバカドリではあまりにもかわいそうだと、アホウドリと名付けられたようです。
そして、人が近づくことがない絶壁に囲われた斜面に、人間から隠れるように少数が繁殖して生き延びていることが後に発見され、その後たゆみない保護活動が行われ、当時は50羽ほどが今では5000羽を超える数生息し、航路探鳥などでその姿を楽しませてくれています。
長年アホウドリの保護活動を続けられた東邦大学名誉教授の長谷川博先生の鳥島での話を何度もお聴きし、長谷川先生とお付き合いさせていただく中で、長谷川先生が「アホウドリと鳥の尊厳も尊敬もない名前で呼ぶのを止めて、昔の漁師さんが尊敬を込めて大海原を飛ぶ神様としての名前『オキノタユウ』にぜひ変えたいですね。」というお話をお聴きしていますので、自分も先生に倣ってオキノタユウと呼びたいと考えています。
今回の旅の話の中でアホウドリ類をオキノタユウと呼んでいるのはそういうわけがありました。
多くの方がオキノタユウと呼ぶようになったら、そんなうれしいことはありません。
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